12月15日集会でのスピーチ(一部のみ)

12月15日集会でのスピーチ(一部のみ)

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金城美幸です。12月12日木曜日に参議院会館で「イスラエルの占領と虐殺に制裁を!パレスチナの国家承認を!」という院内集会がありました。参加者は延べ150人、議員15人、秘書4人が参加され、ガザ緊急アクションなごやの集会にも何度も来てくださっている近藤昭一議員と本村伸子議員も参加し、心強い発言をしてくださいました。私はイスラエルに対する制裁の必要性について発言したので、今日はその原稿を代読していただきます。


(以下、院内集会でのスピーチの内容)

まず最初に、本日の集会タイトルに絡め、一点申し上げます。今日のタイトルは「イスラエルの占領と虐殺に制裁を!パレスチナの国家承認を!」ですが、後半の「パレスチナの国家承認」については、それ自体は重要ながらも、そこに満足するだけではパレスチナ人の権利回復のための変化はほとんど生まないということを申し上げます。国連加盟国の75%、146か国がパレスチナ国家を承認、未承認国が日本を含む46か国ですが、日本はすでに国連総会でパレスチナのオブザーバー国家の地位には賛成していますので、確かに国家承認までのステップはあとわずかです。

 しかし、積年のイスラエルの国際法違反が放置された結果、もはや象徴的な国家承認だけではパレスチナ人の権利回復にはつながりません。現に、圧倒的多数の国が国家承認をしながらも、パレスチナ人の存在と歴史の抹消が今この瞬間も続けています。リップサービスだけの支援はもうたくさんだ、日本はイスラエルの犯罪を止めるための具体的な制裁を早急に課してほしいというのが、パレスチナの人々の切実な声です。

実は、日本がパレスチナ国家を承認しない間に、現実はすでにそのずっと先を行っています。10月末、パレスチナ占領地の人権状況についての国連特別報告者は、イスラエルが国際法違反を止めるまで国連加盟国資格の停止を検討するよう総会に勧告しました。11月5日には、国連総会でマレーシアがイスラエルの除名の提案を総会決議に盛り込むと表明しています。

 この状況から、日本政府にはイスラエルに国際法上の責任を求める喫緊の行動が求められています。イスラエルの国際法違犯については繰り返す必要はないでしょう。57年間の不法占領、ジェノサイド防止等を命じた3度のICJの暫定命令への違反に加え、ICCからネタニヤフ首相とガラント前国防大臣に逮捕状も出ました。イスラエルの国内司法があるにもかかわらず、ICCが逮捕状を出したのは、イスラエル国内には国家犯罪を裁く力と意志がないと判断されたことを意味します。日本は今、ICCへの拠出金提供国の第一位であります。ICCでの訴追を積極的に支援すべき立場です。欧米諸国と日本は、ロシアにならICCによるプーチン大統領への逮捕状を歓迎し、制裁を強化しています。しかし、半世紀以上の不法占領を行い、建国時に追放したパレスチナ人難民の故郷への帰還の権利を無視し続け、レバノン、イラン、シリアの主権も公然と侵害するイスラエルを不処罰のままにするのは明らかな二重基準です。

 加えて10月末、イスラエルはUNRWAの活動禁止法を制定し、このままでは来年1月に発効します。ガザの人道支援の柱のUNRWAが活動停止となれば、住民の被害は破滅的な形で拡大されます。しかし、イスラエルがUNRWAの活動を禁じる目的はそれだけではありません。UNRWAは援助機関のみならず、国連総会に基づきパレスチナ難民の帰還権と結びつけられた機関です。だからこそ、イスラエルは長年様々な形でUNRWAを攻撃し、人道支援と共に、パレスチナ難民の帰還権の抹消を図ろうとしてきました。


 イスラエルの「不処罰の伝統」を終わらせるためには制裁が必要です。今求められるのは軍事制裁と経済制裁の二つです。まず、軍事制裁として国連の人権専門家は「二方向での武器禁輸」を求めています。これはイスラエルとの武器を売り買い両方の停止です。現在、防衛省がイスラエル製ドローンの購入準備を進め、日本企業4社が輸入代理店となっています。G7レベルで言うと、唯一日本はイスラエルの武器を購入する側にありますが、国連人権専門家はイスラエルの武器を売る・買うの両方を禁止すべきであり、かつFANUCのようにガザで使われる爆弾を製造する産業ロボットなど軍民両用のデュアルユース製品の輸出も禁止すべきと明確に述べています。

 他方、経済制裁については、最低限、占領地に建設されたイスラエル入植地に関わる事業に加担しないよう、日本政府は国内の公的・民間部門を監督する責任があります。国連人権理事会は2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を決議し、日本も賛成しました。その後、人権理事会は、イスラエルの入植地事業に関わる企業のデータベースを作り、現在97社が不法行為に関わる企業としてリストアップ化されています

 こうした動きにも関わらず、2017年、日本はイスラエルとの投資協定を結びました。この当時、2017年6月8日の参議院外交防衛委員会では、入植地に関わる企業も投資の促進対象に含まれるか否かの議論がありました。この時、政府はイスラエルによる占領は国際法違反だと述べ、この日本の見解にはイスラエルの「理解」を得ているとしながらも、実際に入植地事業に関わる企業をどう投資の対象から排除し、日本の投資家に情報提供や監視をするかは全く示されませんでした。つまり、日本政府は投資による国際法違反への加担が起こりうる可能性を知りながら、それを取り締まる環境を整えていません。

 しかし、こうした議論は、入植地事業がイスラエル領内の経済と切り離せることを前提としています。ですが果たしてイスラエル領と違法入植地での経済活動は明確に区別できるのでしょうか?私はそれは非常に困難だと考えます。現在、イスラエルの入植者人口は71万人に昇り、イスラエルの占領政策では、イスラエル領と占領地の区別を意図的になくす景観がつくられてきました。また、入植地関連事業とは何かについての国連の基準は、分離壁や入植地インフラの構築から、農地等の破壊への装備提供、金融取引などに至るまで幅広く含んでいます。イスラエルの政策は、領内経済と入植地経済を一体化させ、入植地を不可逆の既成事実とすることを目的にしています。この状況で一体、日本政府は入植地事業に関わらない企業活動をどう調査し、日本国内の投資家に周知するのでしょうか?イスラエルが占領地から撤退して経済構造を変えない限り、それは不可能に近い。そうである以上、イスラエルが国際法上の責任を負うまで投資協定を含む経済協定は破棄すべきです。

 最後に、イスラエルとの経済連携が自治体レベルで進んでいることも指摘しておきます。愛知県は2022年にイスラエルのイノベーション庁と合意書等を交わし、イスラエルの軍事文化を民間転用したイスラエルの企業技術が、愛知県内の企業に導入される事態が始まっています。導入されるスタートアップ技術とは、イスラエルが軍の最新技術・エリート人材・研究環境を使って開発した技術の民間転用だとして、臆面もなく発信しているものです。愛知県の大村知事は、ご自身の著書『スタートアップ興国論』の中で、イスラエルの主張をそのままなぞり、「イスラエルのイノベーションを支えるのは人材と技術という両面でイスラエル軍」だと明確に述べています。この連携事業は県内企業をイスラエルの戦争犯罪に加担させるもので、国連の「ビジネスと人権の指導原則」に照らせば、国は自治体を監督する責任があります。議員の皆さんには各党や各委員会、国会にてイスラエルへの制裁について早急に提起していただくようお願いいたします。

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